インスタレーション
Kaleidophony
カレイドフォニー エコーシステムを用いたサウンド・インスタレーション
2016 尾道(広島県)
2017 札幌(北海道)
作品ノート
会場内に設置されたマイクから声や物音を集音し、エコー音のみを複数のスピーカーから出力する。発せられた声や音が異なるタイミングで異なる位置から繰り返されることで、時間・空間の認識を揺らしながら個々の主体観・身体感を問いかけるインスタレーション作品。
感覚を倒錯させる環境に直面しながら、それが秩序立った法則を持つことに気づいた時、「遊び」が生まれる。透視図法が空間認識に新たな秩序をもたらしたように、規則的に繰り返される音の体験が時間のグリッドとして我々の主観と認識のあり方を変容させる。
時間と空間、多次元のグリッドに複数のレイヤーを重ねるエコー音は、複雑な音の織物として場に放たれる。個々の音は、空間に反復されることで新たな意味を持ちはじめ、同時に、我々の身体が立つフィールドそのものを変質させていく。
意図的に構成された秩序空間=「遊びが生まれる環境」を創造することが、Kaleidophonyという作品シリーズの第一の目的であるが、その空間における遊びの発展が(繰り返される時間レイヤー上に)新たな発展原理を得て、より高度な遊び(時間・空間に働きかける身体あるいはその延長の発見)へと変容することを、次の段階と想定している。それによって、土地・空間・人・時間といった要素が、「いま・ここ」それ自体を固有の作品として浮かび上がらせる。
Kaleidophonyは多層的な機構を用いた場の変容そのものであるが、その素材となる音は大きく3種類に分けられる。一つは空間のもつ環境音。生命や自然の運動あるいは人間の社会的なふるまいが生み出す日常のノイズ。もう一つは組織的な連なりを伴う楽音やリズム。そしてもう一つは、人の発する声やことばである。観覧者の肉声によって、その土地の音文化と発話者の身体性が作品中に色濃く生み落とされていく。
一定の法則のもとに絡み合う音の万華鏡は、我々の身体や知覚にどのようにはたらきかけるであろうか。時間や空間の認識が揺さぶられる中で、自己を構成する諸感覚への信望が揺るがされるかもしれない。身体と実存の問い直しへつながるかもしれない。しかし、今まで気がつかなかった新しい知覚が生まれ、より広がりのある「間」が個人個人に発見されることを望む。
エコー音が織りなす多層的な空間からその身を遠ざけた時、我々の身体は世界をどのように捉えるだろうか。埋め尽くされることのないフィールド、時間と空間の澄んだ広がり。身体・時間・空間の新鮮な感覚のうちに、「なにもない」ことの豊かさを見出す作品体験であってほしいと願う。
実施地域
尾道(広島県)
秋葉原(東京都)
札幌(北海道)
鷹巣(秋田県)
日坂(静岡県)
日出町(神奈川県)
京都(京都府)