学び

音楽を学ぶということ

音楽を自ら奏し学ぶということは、一体どんなことなのでしょうか。端的に言うならば、「あなた」という固有の身体と感性を介して、世界と循環的に関わる営みなのではないかと考えています。

では「音楽」とは、そもそも一体なんなのでしょう。中世ヨーロッパでは、その調和的原理から、数学や天文学と並ぶ学問として扱われました。歌は祈りや言葉の発露として文学や修辞学ともつながる表現を生み出します。また、体を突き動かすリズムは身体に対する感覚を拓き、踊りや集団的熱狂をも駆り立てます。

現代の様々な社会的様相、あるいは歴史的な記録や記述に思いを馳せることが、まだ見ぬ誰かとその創造的精神によって繋がることを可能にしてくれます。

同時に、ひとり音に埋没する瞬間には、他者からの価値づけや社会を規定する様々な意味作用とも離れて、自分自身が何をどのように見、聞き、感じ、考えようとしているのか、そんな問いかけももたらしてくれます。

世界とどのように関わるのか。尽きることなく、どうにもワクワクしてしまうこの問いをたずさえて、音の遊びと学びを楽しんでいただきたいと考えています。それは一人の人間として「自由」を求めるということでもあると思うのです。あらゆる学びに共通することだと思いますが、音楽もまた、人が豊かに生きることに大きく寄与するものであると信じています。

時間をかけてゆっくりと、音楽がひとりひとりの人生に寄り添うものとなることを願っています。そのお手伝いができることは、私自身にとっても大きな喜びを感じるところであります。